知識としては持っているけどなかなか遭遇しない脂肪塞栓症の患者さん。ついに遭遇しました。
大腿骨頸部骨折の診断で来院。救急室でSPO2モニターをルーチンで装着されるとSPO2が88しかありません。もともと呼吸器疾患はないようでしたので明らかに異常です。
しかし本人はまったく苦しそうではなく、息継ぎもせずダラダラとコケたときの状況を話してくれます。
とりあえず術前検査で胸部のレントゲンをとってみると肺は真っ白。snow stormという画像です。CTも撮影しましたが肺炎のような所見ではありません。
Dダイマーは16.5と髙値でしたが、骨折ならこれくらいにはなるかなという値です。
白血球、CRPも正常範囲内でした。
結局呼吸器内科の先生も、肺炎ではないし、だとしたら脂肪塞栓症かなということで、一時はネーザルハイフローが必要な状況でしたので管理していただきました。
確定診断は脳のMRIでするようです。脳梗塞のようにDWIでパラパラと高信号がでますが症状はありませんでした。
しかしここから先が問題でした。
脂肪塞栓症の治療は早期の骨折治療とあります。
内科の先生からすれば、人工呼吸器つけてれば大丈夫なんだからとっとと治療してほしいと。しかし我々整形外科医はそうもいきませんでした。
なぜなら大腿骨頸部骨折なのですが、外反陥入型で手術するにしてもハンソンピン程度の簡単な手術なのです。私達としてはこんなので脂肪塞栓症がおこるの?という感じですがむしろ手術するほうが塞栓が飛びそうです。
結局酸素化が落ち着かず、3週経過し、ほとんど歩いていない人でしたので保存療法になりましたが、手術したほうがよかったのかどうかは悩みどころですね。