最近自費診療ではやっているようなのですが、「切らないばね指手術」というものがあります。
グーグル検索すると3件ほどクリニックの名前が上がりますがそれぞれ55000円と20000円、不明というお値段です(税抜き)大阪と東京、香川にもありますね。
ですがこれ、もともと大きな病院ではひっそりとやっている手術でした。何なら腱鞘内注射としてやるので保険点数は27点、なんと270円で受けられる治療でした。
このエコーガイド下腱鞘切開術は他の自費治療のようなおかしな治療ではありません。エコーガイド下に太めの針を挿入して、麻酔をまきながら腱鞘周囲まで到達。そこで針の鋭利な部分をつかって肥厚した腱鞘を切開するという手術です。非常に簡単ですが、唯一の欠点としてはやはり切り残しが出る可能性があることです。
この手術は普通にいままでもやっていた処置でなにも新しいことはないのです。大きな病院ではどうしても手術件数というのが意識されるのでエコーガイド下で不確実な処置をやるくらいならしっかり開けて切開しようという流れになってしまうのでやる医師は限られていましたが。親切な医師は「じゃあここでちょっと不十分な処置になるかもしれないけど、これで治らなかったら手術しようね」ということでエコーガイド下かもしくはブラインドでシュッと切ってしまっていた手術です。
患者としては病院都合でやってくれないなんて不満ですよね。手術となるといくら日帰りとはいえまず採血で感染症のチェック、全身状態のチェックが入り、そこから日程を決めて、手術室で小一時間の手術をうけ、その後抜糸まで1-2週間は手が使えなくなってしまいます。費用も三割負担で手術自体は6000円ですが複数回の外来受診を考えればやはり2万円くらいにはなるでしょうか。
なによりも皆さん創部を濡らさずに1.2週間過ごすのは無理、ということで諦められます。主婦の方が多いですし。
日本整形外科学会ホームページより
これに対して切らない腱鞘炎手術は5分程度でその場で行なえますし傷口もちょっと太い採血の針をさされた後程度なので、数日で塞がります。当日からやろうと思えば水仕事もできないことはありません。抜糸もいりません。
やっていることはなんらいままでと同じなのですが、保険でやると270円で安すぎるので自費診療としてやっているわけですね。法律的にもなにも問題ありません。
現在は医療費が安すぎて問題となってきています。薬も薬価改定減額で赤字での生産を余儀なくされちょっとの異物混入で会社がつぶれるくらいのことが起こっています。日医工がいい例です。
腱鞘炎の手術も本来は2050点、つまり20500円が病院の収入となりますがこれでは手術のガウンや滅菌機材のコスト、医師看護師の人件費も回収できません。むかしから赤字の手術と言われていました。できたら医療機関側もやりたくないのです。
これからこのような自費の治療がどんどん増えてくると思います。保険診療でできる治療をあえて自費でするのです。自費診療の中にはエクソソームとかNMNとかエビデンス無視な詐欺医療的なものも多いですが、ばね指手術のようなまともな治療が正しい値段で出てくるのは患者も医療関係者も幸せになれていいかと思います。
現状、切らないばね指手術は特定のクリニックでしかやっていないように見えますが、実はほとんどの整形外科医はやろうと思えばできます。近くのクリニックで聞いてみてはいかがでしょうか?エコーがあればできます。
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