病院によっては上級医しか挿入が許されていないという中心静脈カテーテル(Central Vein Catheter)、当院では研修医でも普通に行います。必須手技です。
今回は鼠径部で大腿静脈にCVCを留置する手技を紹介していきます。
その前に2ルートか3ルートか(ダブルかトリプルか)を決めます。
重症感染症などでICU管理のときは基本的にトリプルです。
経口摂取困難になった方のTPN中心静脈栄養にはダブルルーメンで十分です。
①エコーで場所チェック
大腿部の血管、神経の走行は大丈夫でしょうか。内側からVANという覚え方もあれば股をYとみたててNAVYと覚える方法もあります。
つまり拍動する動脈から内側にむかったところに静脈があるということです。
ここをエコーでチェックします。
高さは案外上のほうになります。
鼠径部の折れ目?というのですかそれよりも上になります。
あまりに上すぎると腹腔内を穿刺してしまい危険です。(圧迫止血できず腹腔内に大量出血・・・)
目安としては大腿骨頭の真上で血管を貫くイメージです。
注意してほしいのは、皮膚の穿刺部と血管の穿刺部はことなるということです。角度をつけて刺している以上あたりまえのことです。
②麻酔
大腿動脈の拍動を頼りにキシロカインを5ml程度穿刺する部分に注射します。
このときに神経は動脈より外側にあるということに注意します。外側を重点的に麻酔すると良いようですが、刺すのは静脈なので広めにやれば良いです。
③そのままキシロカインで試験穿刺します。軽くシリンジを引きながら奥に刺していくと血管にあたります。動脈か静脈か色で見分けるのはなかなか困難ですので感覚が命です。
そこでシリンジを針から分離します。針は血管に刺さったままになりますが細いのでたくさん漏れでては来ないはずです。
(勢い良く漏れ出てればそれは動脈を突いている)
④本穿刺をする。
さきほど残した麻酔用の針に平行にさせば必ずあたっているはずです。
一旦奥まで貫いてもどしてくる。セルジンガー法ですね。
ガイドワイヤーを挿れますが、このとき先端の曲がりに注意
曲がりが下大静脈に向かうようにセットして入れていきます。
ここまで来たらもう成功したようなもの。トントン拍子にすすめて合計10分くらいでおわるようにしましょう!
あと一つ注意点
CVの先端はトリプルルーメンでは3つ穴が開いていますがすべて先端に開いているわけではありません。
さらにそれぞれ太さが違います!
大体白ルートはメイン用で16G相当の大きさで先端の中心にあいています。
その他の青ルートなどは側面に穴が開いているのです!
つまりシリンジで引こうとしたとき逆血がないという場面は、血管の側面に穴が接している状態であると考えられます。なので留置失敗ではありません。スムーズにショットできればOKです。
ここだけ覚えておくと損はないと思います。
*合併症
上にも書きましたが腹腔内を穿刺して圧迫止血できなくて大量出血することがあります。他には大腿動脈をついて血腫を作ったり仮性動脈瘤になったりもします。
留置して2週間ほどすると感染症の可能性が上がってきます。看護師さんが毎日ルートチェックをしていますがその際にする消毒が命になってきます。
入浴は鼠径部の場合基本的にはできません。感染の可能性が上がるのでしたくないだけでしっかりとラップで保護したあとシャワーするくらいでしたら大丈夫です。