病院にはソルデムやらラクテックやらソリタやらいろいろな輸液ボトルがあります。
研修医向けの超簡単な基礎知識のみ書き残しておきます。
まずは細胞外液とその他に分けます。
☆細胞外液
例:ラクテック、ソルアセトF、生理食塩水、ソリューゲンF
これらは血管内の電解質濃度とほぼ等しい濃度の電解質が含まれています。
細胞外液を輸液すると数時間は血管内にすべて残るので脱水時や血圧が低いときに利用されます。3時間位すると血管内に4分の1がのこっている状態になります。
血管内は
Na 140mEq/L
K 4mEq/L
Cl 100mEq/L
HCO3 24mEq/L
くらいの電解質濃度です。ですからこれと同じ電解質の輸液・・・・かと思いきや違います。
重炭酸イオンは液体中で長期保存できないのです。その代わりとしてラクテックには乳酸イオン、ソルアセトには酢酸イオンが含まれています。
(ところが重炭酸イオンも短時間なら保存できるのでビカネイトという製品もあります。手術時に利用されます。)
生理食塩水は少し別物でNa 154mEq/L Cl 154mEq/L が含まれています。
塩分は血管内の水分を保持するのに必要なので血管内脱水時には最適なのですがClが多いので多量に投与すると高CL性アシドーシスと呼ばれる状態になります。
ラクテックD、ソルアセトDという製品もあり、これはF(free)とは違いグルコースが5%含まれています。あまり使う機会はありません。血圧が低く細胞外液を輸液せざるを得ないが食事摂取ができず栄養を少しでも入れないといけない場合などです。
☆維持輸液
維持輸液は1号輸液と3号輸液にわけられます。
ソルデム1 ソルデム3A
ソリタ、ヒシナルクなどです。
1号輸液は生理食塩水と5%ブドウ糖液が半々の割合で含まれています。
特徴としてはKカリウムが含まれていない
ということがありますので救急外来で腎機能の分からない初診の人にとりあえずルート確保するのに最適です。生食半分に5%ブドウ糖半分、という感じで血管内と血管外の組織に適度に広がります。
グルコースも少し含まれています。
3号輸液は生理食塩水1に対し5%ブドウ糖水3が配合されています。1:3の割合です。
これにはカリウムが含まれています。
3号輸液は絶食にせざるを得ない時に1日2,3,4本ほどを体重に応じて投与します。
1日に必要な電解質がこれで投与でき、かつグルコースも含まれているので完全な飢餓状態にはなりません。ですが500ml1本86kcalですので入るとしてもほんの僅か。
体重40kgなら2本
50kg−60kgなら3本
それ以上なら4本を1日に使うのが目安です。発熱していれば汗などで水分が多く蒸発しますので多めに入れてあげます。心臓が悪い人は1日500mlの点滴でも溢水状態となるので注意が必要です。
このとき抗生剤で生食が多く入るので注意してください。
例えばユナシンを生食100mlに溶かして1日4回となると400余計に入るわけです
ソルデム3AGというグルコースが多めに入ったものもあります。1本200kcalになります。
糖尿病など耐糖能異常のあるひとには使いにくいです(それでも中心静脈から使う高カロリー輸液に比べるとマシですが)
☆5%ブドウ糖液
電解質が全く含まれていません。グルコースが5%のみです。
電解質がふくまれていませんので血管内にはほとんどのこらず、間質や細胞に取り込まれていきます。
この利点を活かして高ナトリウム血症の患者さんなどに利用できます。
また心不全患者では血管内ボリュームが多量になりすぎていることがありますがこの状態でも抗生物質などの点滴をしなければならないとき、ブドウ糖液を使うことができます。血管内にのこりにくいという点がメリットになります。
以上になります。
細胞外液、維持輸液、5%ブドウ糖液の違いと各製品名(病院によって採用しているものがちがいますが)がわかっていることが重要です。
↓古い本ですが原理原則が書かれており非常に役に立ちます。
より実践的に書いてある本です
↓タイトル通り、基本中の基本から書いてます